ISSUGI from MONJU - EARR Release EXCLUSIVE INTERVIEW

――前作『THE JOINT LP』から3年。今回のアルバム完成までの期間はISSUGIくんにとって、どんな時間でしたか?
 
「SCRATCH NICEとのミックスCD(2011年リリースの『WHERE OWN WONDER』)とかSICK TEAMのアルバムを出したんですけど、ソロとは違って、誰かと一緒に音楽を作ったりしてgrooveのぶつかりあいみたいな、そういう期間だったと思いますね」
 
――SICK TEAMのBUDAくん、S.L.A.C.K.はISSUGIくんとはまた別のタイプの個性を持った2人ですが、そういう彼らとの音楽制作はいかがでしたか?
 
「2人ともすっと自然な感じで知り合って、気づいたら、一緒に曲を作るようになっていたんです。アルバムの作り方にしても、普通に家で遊んでいる時にBUDAくんが作ったトラックを聴かせてもらって、そのなかから選んだトラックにラップを乗せて、ささっと仕上げていく感じだったんで、アルバムにはその時のノリがすごい出てると思うし、制作やライヴで同じ時間や空間を共有することで、自分とは違うBUDAくん、S.L.A.C.K.それぞれのグルーヴや考え方が面白かったっすね」  
 
――2011年にSICK TEAMの一員としてインタビューさせてもらった時、「すぐ、ソロを出したい」と語っていましたけど、それから今回のアルバム完成までは2年かかったということになるんですか?
 
「そ うですね。自分のアルバムの作り方は結構、最初の段階でがーっとトラックを集めるんですけど、その途中で新しく聴いたトラックを聴きつつ、「アルバムには このビート入れて、この曲を外そう」っていうようなことを試行錯誤したり、その間に考えることもあれこれあって。やる気になったり、まったりしたり……だ から、延々作業を続けていたわけではないんですけど、アルバムのことが常に頭にあったという意味で制作期間は1年半くらい?いろんなタイミングが合って完 成したって感じですね」
 
――今回のアルバムは1曲1曲がコンパクトだし、フィーチャリングもS.L.A.C.K.、仙人掌、Mr.PUGという3人に絞られています。
 
「意図してコンパクトにしようと思ったわけではなくて、出来上がったら、そうなってたという感じ。フィーチャリングもトラックを聴いた時の印象でチョイスして、それが今回はたまたま、この3人 だったっていうだけだし。今回アルバムに入れなかった曲も沢山あるんですけど、そういう曲を含めて出来上がった曲を並べて、流れというか「この曲をここに 入れよう」とか、そういうアルバム全体のこととかまあ好きなようにやってるだけですね、いつも。自分でも完成するまでどういうのが出来るのかわからないの で完成して「自分が作りたかったのはこういうものだったんだ」って気づかされたりして。自分は曲の長さにこだわりがないといったら変なんですけど、曲とかDJのミックスとかも、長いとか短いとかどうでもよくて。その人それぞれベストな時間があると思うから、自分のなかで納得出来るものであれば、それでいいんじゃないかって」
 
――3年前のアルバムは、色んなトラック・メイカーが参加した作品でしたが、今回はファースト・アルバム『THURSDAY』同様、16FLIPのトラックで統一されています。
 
「『THE JOINT LP』を作った直後は、「また違うトラック・メイカーとやるのもいいかな」って思ったいたんですけど、『THURSDAY』の時の16FLIPとはまたトラックが変わってきてるという確信があったので、「全部16FLIPのトラックでもう一回作ったらどういうものが出来るかな」ってところから作業が始まったんです」
 
――サンプリングがベースになっているという意味で、ISSUGIくんの作品は一貫していますけど、ラッパーとしてのトラックに対するこだわりというのは?
 
「サ ンプリングも打ち込みも、もっと好き勝手にやって、完成した曲がヤバかったら、それでいいと思うんすよね。例えば、前の日に出た曲をサンプリングしてもい いと思うし、ヤバいものを作るやつは何をどんな風に使って作ってもヤバいものになるというか。音楽の作り方には色んなアプローチがありますけど、それっ て、知らなくてもいいことなんじゃないかとも思うんですよ。何も知らずに発したものが、実は素の自分に一番近かったり、強い表現になっているような気もす るし」
 
――ただ、16FLIPのトラックは、ベースラインも含めた後ノリのグルーヴがアップデートされていたり、サンプル・ソースもジャンルをまたいで、よりクロスオーバーなものになってるのは確かですよね。
 
「ラッ プにしても、トラックにしても、結局みんなそうだと思うんですけど自分の頭のなかにあるものと感じてる事しか形にすることが出来ないと思うんすよね。だか ら、トラックが進化しているとしたら、音楽の幅と頭のなかで起きてる事がスゴいことになっているっていうことかもしれないし、起伏というか爆発。それに ラップも触発されるっていう。トラックにはトーンとテンションがあって、同じトラック・メイカーが作っていたらわりとトーンは一貫していると思うんですけ ど、テンションはトラックによって変わってくるし、その時の気分が音に表れるんですよね。そういうトラックを聴いて、感じたことをラップするわけだから、 リリックもトラックによって当然変わるというか、リリックは、曲を作ってる時の気分、アルバム作ってるときの自分が反映されているだけかもっすね」
 
――アルバムにリリックは載っていませんけど、「ラップは音として聴いてこそ」というISSUGIくんの考えは変わってない?
 
「載 せなくても日本人だったら何言ってるか聞けば解るから別に載せないって感じですね。あと音として聞いてこそってわけじゃないんですけど、逆にそこを無視す るのって無理だと思うし、そしたら音なくてもいいじゃんというか。自分は音と言葉を別々に聞いたりしないんで、普通に両方いいのがいいと思うし。RAPの良さって超色々あると思うんですけど、RAPしてるヤツが自分の詞にスタイルがあるのなんてほんと当たり前の事で、言葉の重要さに関しては言うまでもないんすよね。それで、それなのになんでパッと言葉がわからない国のRAPずっと聞いてきてるかっていったら、やっ ぱり言葉の意味以外にもその声から何か感じてるものが絶対あるんですよね。結局人が発してるものだし意味とは違う何かを感じるからこそ、ずっとそういうの が好きで聴いてきてるんだと思うし。声そのものも、その人が持っている人間性や雰囲気、テンションが音になっているからこそ、言葉以前にラッパーの声に対 する好みがあると思うんですよね」
 
――そして、ISSUGIくんと言えば、所属しているDOWN NORTH CAMP、そのレーベル・ディヴィジョンのDOGEAR RECORDSも動きが活発化していますが、一言でいったらどんな集団なんでしょうね?
 
「自 然に集まって、今があるので、客観的に見られないところもあるんですけど(笑)、必ずしも音楽だけで繋がっているわけじゃないんですよね。なかには音楽と かやってないやつもいるし、服作ってるやつとか、やりたいことをそれぞれやりたいようにやってる感じだとおもうっすね。音楽に関しても全員が全員ヒップ ホップにこだわってるわけでもないっていうのが面白いと思うし。そういう友達が自然に集まってる感じですね」
 
――S.L.A.C.K.の活躍はもちろんのこと、ISSUGIくんが在籍しているMONJUの仙人掌とMr.PUG、そしてFla$hBacksでの活動も話題になっているKID FRESINOのソロも続々控えていますよね。
 
「完全なる偶然ですね(笑)。俺ら、そういうスケジュール調整が出来ないし、惑星直列みたいな、そんな感じ(笑)。もちろん、周りから受ける刺激はかなりあって、自分も色々やりたいなとは思います。今はニューヨークにいるSCRATCH NICEともミックスCDを作りたいなと思っているし、今回、16FLIPとがっちり作った反動で色んなプロデューサーと作るソロとか、SICK TEAMも、BUDAくん、S.L.A.C.K.それぞれが変わっていってるので、ファーストの時のようにまたノリで作ってみたいし、『Earr』を作ったことで、自分自身、軽くなった気もしているので、フットワーク軽く色々やれたらいいですね」
 
取材/文: 小野田雄